大規模な民法改正!
債権法を中心に、民法の大きな改正が予定されています。しかも大規模なものです。今回の民法改正について、大手新聞社サイトなどで記事になっていますが、資格スクールのLEC東京リーガルマインドの記事「民法改正」がコンパクトにまとまっています。
120年ぶりに民法が大改正
2017年5月26日、民法(債権法)改正案が参議院本会議で可決され、6月2日に公布されました。そして、公布の日から起算して3年以内の政令で定める日に施行されます。改正の概要
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消滅時効の特例である170条から174条までが削除され、時効期間は原則として「権利行使できることを知った時から5年」に統一されました。02
法定利率が現行法の年5%から年3%に引き下げられました。さらに民間の金利動向に合わせて変動していく制度が導入されました。03
保証債務について、個人の保証人を保護する規定が詳細に定められました。事業用融資の債務についての保証契約については、特に公証人による公正証書の作成や保証人の意思を確認する制度が詳しく定められました04
現在の市民生活は約款によって規制されています。電気・ガス・鉄道・運輸・航空・金融・インターネットなどで広く適用されている約款が当事者を拘束する契約となっています。そこで、約款の有効要件として、定型約款を契約内容とする旨の表示を要求する等、規定を整備しました。05
その他、①意思能力の新設、②代理規定の整備、③債務不履行、④解除、⑤危険負担、⑥瑕疵担保、⑦債権者代位権、⑧詐害行為取消権、⑨将来債権の譲渡、⑩賃貸借に関する存続期間・妨害排除・原状回復・敷金の扱い等など幅広い改正が行われました。
(以下、省略)(なお上のLECサイトでは、試験対策に関する記述もあるので一度読まれることをおすすめします。)
民法の制定当時と社会環境が変化しているとはいえ、債権分野を中心にかなり条文が変わっていることが分かります。
言うまでもなく、民法や司法試験などの法律系資格を始め、公務員試験などでも出題される私法の一般法です。試験への影響が心配されます。
(画像はイメージです。)
LEC東京リーガルマインドの民法改正講座「改正民法重要論点25講」
なおLEC東京リーガルマインドでは、試験対策はもちろん、仕事で民法に関わるビジネスマンの方にも最適な民法改正講座「改正民法重要論点25講」を用意しています。
「この講座では、約200項目に及ぶ改正項目の中から、特に重要な25項目について9時間の講義で解説していきます。(公式サイトより)」と、短期間で重要部分をフォローできるおすすめ講座です。改正民法重要論点25講はこちら
またLECでは司法試験・予備試験・ロースクール入試向けの民法改正講座も用意しています
試験は簡単になる?
もっとも朗報もあります。従来の判例や学説が明文化されたため、条文知識だけで解ける問題も多くなります。もちろん十分な学習は必要ですが、明るいニュースと言えそうです。
一例として「敷金返還ルールの明文化」がありあります。国土交通省ではガイドラインもありますが、今回の民法改正では明文化されています。
なお余談ですが、敷金に関する資格として、敷金診断士があります。民法改正後はどのようになるのか注目したいです(もっとも敷金診断士は宅建や行政書士などのダブル資格が多いようですが)。
【敷金診断士】合格しやすい不動産資格!?合格率・難易度・過去問まとめ【試験対策講座も】 | 試験部
敷金診断士の需要・試験の出題範囲(科目)・合格率・難易度・過去問等についてまとめました。敷金診断士試験の合格を目指している方、また宅建など他の不動産系資格とのダブル取得を検討されている方に参考にして頂 ...
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民法改正で、公認会計士などの資格が18歳で可能に
今回の民法改正で、一部の国家資格の合格が18歳で可能になります。
勉強するぞ!
公認会計士などの資格、18歳で可能に 民法改正案
12/23(土) 21:37配信 朝日新聞デジタル成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に関連して、政府は公認会計士などの専門資格を取得できる最低年齢を現在の20歳から18歳に引き下げる方針を固めた。一方、飲酒や喫煙、公営ギャンブルができる年齢は現在の20歳以上に据え置く方向だ。
(中略)
法務省関係者によると、年齢引き下げの対象になる主な専門資格は公認会計士、行政書士、司法書士、社会保険労務士など。医師も対象になるが、国家試験を受験するには大学の正規課程(6年間)を修了するよう定められており、現実的に18歳で資格を取得することは極めて困難だ。公認会計士は試験合格後に3年間の実務補習をし、登録手続きをすれば資格を取得できるため、実際に18歳の有資格者が生まれる可能性がある。過去に16歳で公認会計士試験に合格した人がいるという。
https://www.asahi.com/articles/ASKDD4H7XKDDUTIL02M.html
合格年齢が引下げになると、それだけキャリアを積むことができます。また資格そのものに人気が出れば、スクールや講座が多くなり、受験生側も選択の幅が広がります。
【決定!】民法改正時期は「令和2年4月1日」
民法の改正時期が決まりました。令和2年(2020年)4月1日です。東京オリンピックの年ですね。これで試験対策にも力が入りそうです。
改正民法施行日閣議決定 平成32年4月1日 未払い金の消滅時効統一など200項目
12/15(金) 11:09配信 産経新聞契約のルールを明確化する改正民法について、政府は15日、施行日を平成32年4月1日とする政令を閣議決定した。契約に関する規定の大半は明治29(1896)年の民法制定から変わっておらず、約120年ぶりの大改正。法務省は施行日までに改正内容の周知徹底を図るとしている。
https://www.sankei.com/politics/news/171215/plt1712150011-n1.html
読んでおきたい「民法改正」の書籍まとめ
繰り返しになりますが、今回の民法改正は「かなり大規模」なものです。ですので「書籍でじっくり理解したい」という方も多いはず。そこでおすすめの書籍をまとめます。
【アガルート】マンガでやさしくわかる試験に出る民法改正
司法試験や予備試験講座などを開講するアガルートアカデミーによる民法改正の書籍です。
アガルートアカデミーは元LEC司法試験講座の工藤北斗先生(司法試験57位の上位合格)が設立した資格スクール。そんなアガルートによる編集です。アガルートアカデミーのおすすめポイント(特長)とは?
しかもタイトルに「試験に出る」とズバリ書いてあります。もし試験対策で購入されるならば、本書がおすすめです。しかも読みやすい漫画ですから、最後まで読み通せます。
アガルートの民法改正漫画を買ってみた!手軽に分かるおすすめ書籍 - 速報試験ニュース
アガルートアカデミーによる「マンガでやさしくわかる試験に出る民法改正」。改正部分が多く、しかも試験では頻出分野もある。書店に行けば本格的な書籍もあるが、まずはこの1冊で予習感覚で読んでみてはいかがだろ ...
shikaku-edu.net
内容紹介
法律系資格試験のプロがマンガストーリーとともにわかりやすく解説する改正民法の試験対策本です。
制定されて以来120年ぶりとなる大幅改正となった民法改正の要点を「おもに判例を明文化した改正」「おもに欠陥を修正したもの」「新たに追加された条文」などの観点で41項目厳選。○×問題とわかりやすい解説、「ここだけは押さえたいポイント」、関連条文・参考判例で、完全整理しています。
一刀両断!平成29年民法大改正 完全解説 全条文付
次におすすめしたいのが、Wセミナー司法書士講座の山本浩司先生が執筆された「一刀両断!平成29年民法大改正 完全解説 全条文付」です。民法改正に関する書籍は多いですが、次のような特長があります。
- Wセミナーの実力派講師である山本浩司先生による分かりやすい解説。
- 豊富な事例・具体例で理解が期待できる。
- 重要な条文はしっかりと掲載されている。しかも民法全条文が掲載された取り外し可能な別冊も。
LEC【逐条式】改正民法解説Book
こちらは総合資格スクールのLEC東京リーガルマインドによる解説書です。おすすめポイントはズバリ「逐条形式」「改正前と後の対比でポイントがつかみやすい!」の2点です。
一般書店での発売はありません。LECオンラインのみでの限定販売です
Before/After 民法改正
テレビ番組の「大改造!!劇的ビフォーアフター」みたいな書籍のタイトルですが、著者の方は潮見佳男先生など、錚々(そうそう)たるメンバーです。
本書の特長ですが、単なる制度概要などの説明に留まらず、232の具体的なケースを用いている点です。その上で法改正前(ビフォー)と改正後(アフター)が比較できるようになっており、改正点がスムーズに理解できます。工夫された意欲的な書籍です。
週刊東洋経済(まるわかり 民法大改正&個人情報保護法)
週刊東洋経済の2017年9月2日号です。週刊東洋経済はビジネスマン向けの雑誌なので、基本書などと異なり手軽な感じで読めます。
また雑誌のタイトルにもあるように、民法改正のほか、個人情報保護法の改正も扱っています。こちらの個人情報保護法の改正もビジネスほか、PTA名簿や自治会など普段の生活においても影響が予想されます。
契約ルールを定める民法が1896年の制定から120年ぶりに抜本改正された。さらに全企業を対象にした改正個人情報保護法もスタート。日常のビジネスを変えうる二つの法改正。何が変わり、私たちはどう対応するべきか。本誌では一線級の専門家が、最低限知っておくべき勘所を解説する。
本誌は『週刊東洋経済』2017年9月2日号掲載の26ページ分を電子化したものです。
【主な内容】
(引用)アマゾン
パート1 民法改正
民法大改正でここが変わる!
【売買】「契約不適合責任」で問題の解決策は柔軟に
【保証】保証人に手厚い保護策 債務者へのチェック容易に
【約款】ありそうで実はなかった 約款のルールが明確化
【債権】短期消滅時効の廃止で債権者にメリットは?
【ITサービス】責任を負う期間が実質長期化 中小開発会社はピンチに
【不動産】買い手、借り手の権利拡大 事業者は特記事項が命
「譲渡禁止」債権も譲渡できる
パート2 個人情報保護法
どこまでが個人情報? 大改正で何が変わったか
個人情報保護対策のための4ステップ
「個人情報保護委員会」との賢い付き合い方
マンション管理組合は個人情報の山
EU「個人データ保護」新法の衝撃
「匿名加工情報」ビッグデータ活用への布石
まとめ
ここまで民法改正の概要と、読んでおきたい民法改正に関する書籍をご紹介してきました。
書籍については、この他にも解説書や漫画もありますが、まずは1冊を決めて繰り返し読まれることをおすすめします。その上で試験の種類により、充分な対策を採られると良いでしょう。